雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

2022-01-01から1年間の記事一覧

2022年12月の俳句

その一 ドアの前主待つ猫冬夕焼 関東の隅までありあり冬の月 雨漏りにあたふたする夢秋深し コンビニを出るや一輪冬椿 砂被り赤いマスクや土俵冷え スマホ小便のひと秋深し 鳩下より現る病棟六階冬 妻三子震災死夜間中学生秋灯 その二 冬立ちぬ凛と整ふ辛夷…

新たな戦争状態に対応する新たな知、新たな運動

新たな戦争状態に対応する新たな知、新たな運動 2022年10月16日 文明フォーラム@北多摩研究例会(オンライン) 雨宮昭一 はじめに テーマは、「新たな戦争状態に対応する新たな知、新たな運動」というふうにいたしました。それはなぜかといいますと、多…

俳句の現在地

まだ知人になって短い田子慕古さんから、彼の第一句集である『霧襖』(東京四季出版、2022年)をいただいた。田子さんは、50歳の時、職場の俳句部にかかわって俳句を始められ20年たち古希となった本年に出版された。序を寄せられた「秋麗」主宰藤田直子…

11月の俳句

その一 敵味方戦死盛りの春の若者 街騒は無言の四叉路渋谷秋 街騒をバラードときく秋の暮 一つの買い物で帰る天高し 天高しコップ一杯富士湧水 よくみれば吾亦紅は赤酸っぱい 紅深し自足している吾亦紅 何もかも墨色にする街の霧 それぞれに霧を背負いて交叉…

2022年10月の俳句

その一 東北路稔り田なべて方形に 海の香の肉汁弾けカキフライ 帰り来て街に名月灯の一つ 桐一葉結構器用に生きている 歩く影皆透き通る盆の月 演奏やみ音のみ残る星月夜 その二 落葉踏みきのこの見える目となりぬ 街中の闇の中なる虫時雨 鹿の目にやはらか…

「生活社会」を独立変数にして考えるーコロナ禍、ウクライナ、台湾「有事」によせて

最近、コロナ禍やウクライナ戦争への対応をめぐって、権威主義国家対民主主義国家の違い、対立などの議論がおこなわれている。民主主義国家は、政策決定も実施も市民社会の意向を自律的な政党や議会をとうして行い、権威主義国家は、それを一党制や政府独裁…

2022年9月の俳句

その一 咲かぬものは咲かさず夏の植物園 植物園窓全開の野分前 肉厚き蓮の蕾に覚悟あり 蝉時雨浴びて夏の人となり 葉と茎に埋もれて疎ら夏の薔薇 葉と茎にほどよく疎ら夏の薔薇 左右大小非対称ベゴニアの片想い カンチクハチクトウチク夏の竹 炎天や少し小降…

空襲も疎開も過去のことならずー「台湾有事」によせて

表題の俳句は、7月はじめに詠み、毎月私の20前後の俳句の中から私の住んでいる小金井市にある地域紙の編集部が1句選び、8月の俳句として掲載してくれるものである 詠んだ時は、ナトー派と反ナトー派の代理戦争のウクライナ地域に限定されていた戦争が範囲を…

2022年8月の俳句

その一 敬老の人全戸に敬老の日 門下生かなり年上秋麗ら 猫じゃらしの空き地猫背の人が行く 大昼寝かの世この世のそのあはい 寝る前の我は誰ぞ昼寝覚め 梅雨明けの風をほぐして柳かな 花合歓やゆかしきゆえの多情多恨 その二 炎天の芯の黒さや深大寺 建長寺…

ロシア・ウクライナ戦争の終結の仕方

1,,出発点、前提をどこに置くか 1990年前後には冷戦体制がおわり、しばらくアメリカ一極支配が続いたが、それがトランプ政権の「アメリカファースト」のごとく、終焉をむかえて現在がある。現在の国際的問題は多様にあるが、ウクライナでの戦争、香港問題、…

2022年7月の俳句

その一 雲の峰背負いて都市の変電所 聡明を超える明るさあまりりす 朗らかな上臈蜘蛛の網に入り 素寒貧素寒貧と亀が鳴く 猫暑しいもむし暑し人暑し 炎暑なり歩道橋の理不尽さ 変電所の中の瀟洒な夏館 その二 小雀を飲み込む鴉雨しきり 小雀を飲み込む鴉にか…

戦後を戦後以外で語ること、四潮流論、協同主義と自由主義

5月4日占領・戦後史研究会で濵砂孝弘さんの報告「岸信介の二大政党論と安保改定」を聞いた。趣旨は岸は50年前後には、経済安定自立を主に考え、労使協調、経済の計画化など、修正資本主義と福祉国家を考え、英国型の反共の労働党と保守党の二大政党制を構…

2022年6月の俳句 

風薫る二〇〇ページ二〇一ぺージ メロンパン似合ふ少女や夏来たる 蛹脱ぐ蝶の目静か甲斐連山 花一輪卒業式を完成す 釣竿を空に一振り夏来る 脳内にデキシーランド夏を行く 大花火おおきく開き闇始まる 囀りの中さえずりて鳥となり 大欅夏空に光を孕ませて 手…

2022年5月の俳句 その二

万緑や二歳児手を握り来る 海からの風若葉の色調へ フルートは心の波か春惜しむ 国民族で生きてゐぬのに難民春北風 両者ともナチの要素や春嵐 核による平和終わりぬ黄水仙 またも長崎の鐘とんがり帽子の赤い屋根 しゃぼんだまゆらゆらこの星ゆがませて 罌粟…

20221年5月の俳句 その一

空っぽの電車虎杖の芽まっすぐに ウイルスが変異を決めた春の午後 てんとうむしさかりててーぶるいっしゅうす 尺取虫一メートルを二分三十八秒 ともあれなんじゃもんじゃのはなざかり 壁につく線ぴたぱたぴたと夜の東風 夏風や弟子はげちゃびん師ふさふさ 柿…

2022年4月の俳句

鞦韆の揺るがす空の閑かさや 古雛鼻梁丸き婆に似て セルフレジやり終えて老春の月 弓取の力士の老け顔春たける 深呼吸今年も今年の花に遭へ 探すのは場所自分ではなし春 ライン中窓開けて春雨を聞く 人去りて春風うらら遊園地 子の家族帰る車のゆるゆると 前…

私の俳句の三類型ー「「ただごと」俳句」「日常あるある俳句」」「アートとしての俳句」

一か月ほど、特に準備に集中して、先月27日に協同主義研究会で「ポスト戦後国際システムと再コモン化,コモン化」という報告を終えた。激しい議論もあって色々教えられた会であった。その間俳句は思いついたことを詠んでいた。27日がすんでからは、一人吟…

2022年3月の俳句

一つだけ吹きあがる雪春の雪 雪時雨一途に横切る椋鳥一羽 空碧き数多の枝に梅一輪 ある寺の朱門の上の大曇天 スマホする眉をきりりと寒椿 義理などと断じていはず子のゴディバ 秋水が武蔵野の音奏で 末子入学空いっぱいのしろもくれん コロナ禍の春風はさん…

悲惨な市街戦と「傀儡政権」ーロシアのウクライナ侵攻によせて

ロシアのウクライナの全面支配をするための侵攻がおこなわれている。漏れてくる映像でしか判断できないが、ウクライナの銀行への現金引き出しの行列、身一つの地下鉄駅に避難、などを見ると、ウクライナの市街戦での戦闘体制、必然的に住民を巻き込む大都市…

農村の“第二次都市化”と“再農村化”

長男が山梨県の深い山里に古民家を得て改装している。その集落50人ほどの人口の3分の1ほどが、この1,2年の間に都会から移って来た人たちだという。この傾向は多少はあれ全国に起きていることは周知のことである。私もいくつか見たり聞いたりしてわかった…

2022年2月の俳句

3月の協同主義研究会での報告準備のために文献や資料を読んでいる毎日である。詠んだ俳句は以下の通り。 猫だまし猫に試して寒の入り 猫だまし猫迷惑さふに大寒へ サンマリノの城の上なる大虚空 プロバンスの農夫光を収穫す 元日の快便いい年だ 裏方の晴れ…

2022年1月の俳句

著書の校正が終わってから俳句を90句近く詠んでしまった。そのうちからいくつかを。 書くことはすてることなり寒椿 詠むことは捨てることなり大旦 想起とはふわりと戦ぐ芒原 鯔跳ねてこの世の外に墜ちにけり 助けてと言へなんとかなる寒椿 いい加減に生き…

2022年の年賀状

明けましておめでとうございます。昨年中は大変お世話になりました。本年もよろしくお願いいたします。昨年は病を持ちながらも大過なく過ごすことができました。 コロナ禍のなかで内外各地、各種十余のオンラインによる研究会に報告もふくめて参加でき、居な…