雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

空襲も疎開も過去のことならずー「台湾有事」によせて

 表題の俳句は、7月はじめに詠み、毎月私の20前後の俳句の中から私の住んでいる小金井市にある地域紙の編集部が1句選び、8月の俳句として掲載してくれるものである

 詠んだ時は、ナトー派と反ナトー派の代理戦争のウクライナ地域に限定されていた戦争が範囲を超えて、西ヨーロッパと日本に拡がる場合も漠然と意識していたが、もう少し直感的に詠んだものであった。しかし、8月に入ったら事態は恐ろしく現実的になった。特に周辺離島に住む住民にとっては「空襲」と「疎開」の問題は直接的であった。つまり米上院議長の訪台と中国の今回ロシアが使っている「進攻」という言葉も入れた軍事演習である。

1,軍事の展開

 このことは、専ら軍事的にみれば次の様に展開していく可能性がある。双方とも直接軍事的衝突になることは避けるといいながら、これまでの大戦の如く、対峙した現地で小競り合いがありそれをあおるマスコミがあり、本国でそれを収めようとする政治、軍事当局を「弱腰」「「裏切者」などとさけぶ政治家やジャーナリストなどと、民衆があり、本格的な戦争になっていく。どちらが先に全面化するかはわからないが、仮にではあるが、小競り合いから中国が台湾に「進攻」をはじめ、アメリカ軍の展開のべ―スである日本の沖縄基地、在日米軍司令部のある横田基地を攻撃する。海上では米軍の空母を破壊する。

 当初は中国が制空権、制海権を掌握して優位に展開する。しかし米、欧、日は極東以外の軍事資源を極東に集中して反撃に出る。中国は経済的な相互依存もふくめてロシアと同盟する。かくして中露vs米欧日戦争となる。かくして中国本土も攻撃対象になり、中国も日本の基地以外もアメリカなどの本土も大陸間弾道ミサイルなどで攻撃を行う。      

 そして劣勢になった側が戦術核兵器を使い、相手も使い、戦略核に移行する。いずれにしてもこれまでのように「無条件降伏モデル」で戦争は終わらない。かくして全面的な核戦争になる。以上が専ら軍事の論理に即した展開である。

2,軍事が決めるわけではない。事態の動かし方。

 しかし、物事は軍事だけで進行するわけではない。経済、政治、外交、社会、文化、運動、交流などが事態を動かす。日本の場合も中国が尖閣諸島に「武装した漁民」として「上陸」した場合はいち早く自衛隊が対処できるようにして中国を牽制すべき、などの主張がある。しかしこれが中国人民軍と日本の本格的な戦争に展開することは軍事的には十分ありうる。つまり空襲も疎開も過去のことならず、である。

 だから問題は上記核戦争も含めた軍事的展開を多様な非軍事的な要素を使って「させない」「やめさせる」ことである。そのためには、順不同であるが様々なことがある。一つは、本年7月7日のブログでのべたように、外交では、多数を占める非覇権国の意思を集め、以下のことも踏まえて覇権国を分断したり操作して「させない」」ことである。第二は「侵攻」、占領、支配がペイしないし、意図どうりに行かず、失敗することを意識させることである。「非進攻」側がそのためには。経済制裁を行うことを計画する。さらにもしも占領した場合、大多数の住民が非暴力の非協力、抵抗を行い占領の意図を挫折させること、そしてそれが本国の反戦の動きと結合して始めた勢力が排除されることを意識させることである。勿論、軍事の側面でも進攻された側が、防御的な反撃をすること、はじめのところで進攻をとどまらせることができればよいが、拡大させない準備が必要である。

 さらにそれらを支える基盤となる、各国内の無数の文化、運動、生活をめぐる互助や連帯の集団とそれらのネットワーク、さらに国を越えた住民同士の文化、諸運動、など団体やネットワークが上記のような戦争を阻止し、やめさせるような動きを取ることが結局のところ決め手になる。もし集団がなかったら立ち上げればいいのである。以上のことが、好戦的な扇動、排外主義、他民族差別などの言説に簡単に操作動員されないことに通ずる。結局、一人一人が今、持っているつながりをとうして動くしか、ことはうごかないし、動かすことはできるのである。 静観し拱手傍観秋になり                                              

 以上が戦争をしない、させない第一段階であり、それが不幸にも第二段階に、つまりはじめられてしまったら、本年2月分26日および7月7日のブログでのべたように、亡命政権をつくり、国内では、非軍事、非暴力で非協力、抵抗をつづけ、内外呼応して運動や、外交をおこない、侵略国本国での、反対の動きとペイさせない、占領地の動きが連動して、戦争推進勢力が退場するようにする。実際、歴史的には、ナポレオン戦争とナポレオン、二次大戦とヒトラー,東條英樹、ムッソリーニベトナム戦争アメリカの政権、アフガニスタン戦争とソ連崩壊、などなど、戦争推進勢力は排除されることは枚挙にいとまない。

 以上は私の この問題に対する試論である。それぞれの人がそれぞれに空襲、疎開、核戦争にならないように考え、行動するときにわずかでも参考になれば幸いである。