雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

2022年8月の俳句

その一

敬老の人全戸に敬老の日

門下生かなり年上秋麗ら

猫じゃらしの空き地猫背の人が行く

大昼寝かの世この世のそのあはい

寝る前の我は誰ぞ昼寝覚め

梅雨明けの風をほぐして柳かな

花合歓やゆかしきゆえの多情多恨

その二

炎天の芯の黒さや深大寺

建長寺蝉の声やみ巨樹残る

夏燕燕返しを切りかへし

ボストンの生牡蠣テーブルは夜明けまで

水音に揺るる鬼百合闇匂ふ

ももんがの子供見る子の手素直なる

ももんがの子供見る子の手空を撫で

釣りし鮎光まみれの線引きて

その三

饒舌は孤独のかたち山法師

真昼間に涼しさ纏い友の来る

葱胡瓜買うものすべて自分量

万緑や父喪いし日のごとく

大雨山火事頻りのたうつこの星の人

じっじっじ追う鳥躱す蝉の声

子等なぜか集う石段夏の風

祇園会へ坊さん走る猫走る

柿の花用はないけど話しかけ

その四

謀議のごと小声で話す大暑かな

苦瓜の花枝幹根と夏を生き

炎天に緋の艶深め夾竹桃

複雑でいい顔メロンつくりの丹後の人

白き花赤く染めいく葉月闇

灼熱を葉肉に吸いて日照り草

秋茄子も赤ん坊も大笑い

運命を革むることのきしのぶ

バンパーに映り留まる秋の風

その五

ガードマンに片影も無しガス工事

空襲も疎開も過去のことならず

まくなぎを払わず群れに従はず

大あくびしてあたまからっぽ無敵夏

山賊の頭のごと睨む蠅虎

踏切があかぬ間に皆老ふ夏

一秒後に廃墟となりぬ団欒夏

静観拱手傍観秋になり

目耳他不如意なりゆくことをかし

螺子花の螺旋を風がつたひいく

以上