父・雨宮昭一について
雨宮昭一は昨日、2025年11月8日午前に
8年間闘病していた肺線がんが原因で永眠しました。
81歳でした。
学界の皆さま、句会の皆さまをはじめとする関係の皆々さまと、
ブログを楽しみにしていただいていた読者の皆さまに、
父を愛していただき心から感謝申し上げます。
雨宮昭一の家族一同
2025年10月の俳句
その一
涼けしや手抜かぬことに決めてから
「学業」はかすかに「成就」秋祭り
できぬことはやめること秋微雨
つぶりを麻痺させ消化液かけ体液を吸うまいまい
簡単に散らぬ分厚さ鳳仙花
赤蜻蛉と同じ風に当たっている
その二
できぬ筈の報告済ませ夏過ぎぬ
甚平着て皮膚のさやかに驚きぬ
一本の棒となりて秋の風
時所人を選ぶ残暑かな
手抜かずは研究にもあり秋麗
新院生学問の瞳まっすぐに向けにけり
以上
2025年9月の俳句
その一
炎帝やそれぞれのいのち生かしきり
百日草淡々戦後を終はらせず
大粒の粗目の碧く透き通る穂高への雪渓
風立ちぬ静謐といふ音の中
伝わるものいつも新し幼な作る盆の牛馬
流灯や死ぬまできちんと生きること
その二
削るもの未だあり八十路夏の歯科
蟻に無関心たかられて猫跳ね上がる
「危険気温」なれどどう見ても秋の雲
戦はじまる戦後は終はる桐一葉
東条英機に似てきて東条の夏を越え
八十路の秋のいのちの写生未だわからず
笠脱ぎて此岸に戻りし郡上人
狭庭の黙緩び行く合歓の花
静寂といふ白い街の濃桔梗
アンにとってなにがしあわせかとマシュウグリーンゲイブルス夏
はじまりもおわりも個の成功リベラリズム夏
以上
2025年8月の俳句
その一
忘れるといふ無数のわかれ自然薯
老残秋思手抜かぬ炊事洗いもの
政争やシステム末期の暑さかな
稲妻連続連続つんのめる
稲妻の照射のたびの異なる地球
若医師の試行錯誤と我夏の身体
梅雨出水旧家の床下一掃す
老残の埋に詩のあり藤袴
その二
美しきしはぶき一つ癌病棟
顔いっぱいの汗の時から長い旅
誰も咳せぬ夏の午前五時が好き
八月やミロの黒猫動き出す
ユーラシア思川の流しびな
死が生を不断にささえる古代杉
以上
2025年5月の俳句
その一
徴兵なき八十年の子供の日
自由民主主義のひとまず終わりトランププーチンシュウキンペイ夏
自由主義少なき民主主義に生きる人あまた麦の秋
燕来る机の上の岩波新書
癌帽子斜めに軽くかぶる夏
雁北にモーニングカフェの茹で卵
内外のどちらも異界しゃぼんだま
行く春や娘の娘中学生
その罪を一人に負わせ聖金曜日
遅れることの豊かさと不安春の雁
その二
鐘朧ろ草朧ろ鐘の音の芯草の芯
逃げ水の水の中なる望楼
母の指の桑摘刃動きて光らず
木芽和えパリは晴れているか
冗談があることでなくあることが冗談万愚節
実存や腐る前に乾く大根
いっせいに花冷えの中開く桜かな
何気なくあずかる風船たちつくす爺
ベルギー人(びと)の濃紺のコート花の雨
児童公園にふたりのをとこ花時雨
銀の糸ゆるく斜めに花の雨
その三
山吹の一枝瓶に春惜しむ
夏近し息子つくりし鶏がらスープ
逃げ水の中へトラックつぎつぎと
逃げ水やタワーマンションとろけだし
野遊びや重箱包む風呂敷を解く
野遊びの子らに若葉のむせる風
野遊びや子ら飛び越える棚田かな
母が揉む新茶葉嵩へり香り立つ
クレバーをねらふをとこや万愚節
以上