その一
冬日満つ一ヘクタールの駐輪車
色褪せて冬菊咲くや底光り
赤ん坊の寝息聞える春障子
前の世の話声する白障子
日払いの仕事帰りのおでんなり
歯が痛いてふ初夢覚めても痛い
20を19と書く前世紀の遺物年賀状
暮れの日の光の強さにたじたじと
声届き声返る朝風邪治る
その二
うしろからふわりと抱く雪女
吾が心やはらかく操る雪女
プラトニックの一線越えず冬銀河
猫の毛の絶望も希望も一毛打尽
ゲームする青年の脚攣る電車冬
日陰迅く陽だまりおそき日の光
踏切をかんからかんと冬の月
健ちゃんの息子です故郷冬の道
コンビニにひとひとひとひと元朝
撒き散らせしDNAにお年玉
その三
一両の電車湖行く初景色
枯野行く人を見ている天体望遠鏡
初御空十重に重なる無人の機
ラインにてお年玉論争決まらず
懐手して頭からっぽ大旦
初参り天狗党墓行軍す
冬の川身じろげる鯉目をそらし
仁王顔のをとこ道掃く初御空