雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

2023年2月の俳句

その一

大寒の大楠の幹あたたかく

金色に透くカーテンのごと蠟梅

落とし湯のきゆふとないて寒に入り

加湿器の忘れたころに泡を出し

いきなりのかの日の懺悔梅香る

東京湾のセイウチのためいき

その二

初釣りや太平洋に浮き一つ

武蔵野を縦に分け行く夕時雨

波止の波音白し初時雨

凩にバケツ飛ぶ音みな同じ

玉子酒天動説を説くをとこ

富士駅にあられもなき冬の富士

連山にいだかれている甲斐の冬富士

二室に灯りあるビル三が日

その三

去年今年水は曲がって流れ行く

街にある村の社に初参り

乗客はその鉄道の人ばかり冬ざるる

幾何学的声に満ちたり電車冬

縄文の時は温暖一万三千年

わがはいのがん細胞も寒に入り

パイソンを食むライオンの息白し

食われてる小象の腹の湯気はげし

序の口の行司の裸足春隣り

枯野行きバス最終便に乗り遅れ

着ぶくれて枯野の前を右左

枯れるとはかくも脱色冬薔薇

イヤフォンを外す二月はじまる

ぎしぎしと羽を軋ませ行く白鳥