雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

2024年3月の俳句

 

 

 この二月は多忙であった。かねてから究明しようとしている自由主義と協同主義の関係をその経済と憲法に関連させた研究ノートをなんとか書き終えた。近いうちにある大学の研究所の紀要に掲載されるが、ここでも紹介するつもりである。

 そのほかに、一つはウクライナ戦争、パレスチナ戦争を一日も早く停戦にすることを考え、私は昨年の研究ノートでも述べたように、その地域に生活している人々の生命と生活を最上位に置く国際秩序を考えている。実際、国家主権、主権国家のために地域の人々が生命と生活、生命も含む犠牲を甘受することは自明ではないのである。また終戦とも関連するが、戦争の原因についても開戦する側が主観的にも客観的にも、あるいは口実でも、自らが相手に害をうけている、つまり窮鼠であることから始まる。それゆえ、窮鼠を国際的にも作らず、またならないことが考えられなければならない。

 もう一つはこの間の政府与党の憲法改正への動き、および昨年12月の殺傷武器の共同ライセンス国への武器輸出の解禁決定、さらに今決定されようとしている第三国への殺傷能力ある武器輸出の解禁の動きである。これは八十年近く保持されてきた、民需中心の経済、武器禁輸、戦争不参加、という体制の大きな変化である。この転換期にどうするかを考えている・

 この戦争の停止と憲法九条やその結果としての武器禁輸、直接の不参戦などとの、関連を私は、両戦争のどちらにも殺傷兵器を送らない日本がそれを背景に、停戦交渉に積極的にかかわり、そしてひいては武器生産輸出入禁止の、さらには地域主権の国際秩序を作る方向性を出すべきと思う。この四月にあるフォーラムでこのことについて報告することになっていてその準備中である。さて俳句である。

 

その一

水仙のうしろの石のあたたかさ

朱の闇を無限にくぐり一の午

卒業といふ一瞬の砂埃

薄氷はすべて割るべし遅刻すべし

この恋の終わりの確信クロッカス

間諜も俳句も万緑はせを仙台

茱萸の実赤の透明愁い果つ

幼老鶸烏路地の日向ぼこ

古文書を日だまりにおき憂し楽し

橋掛かりにしずかにすわる彼の世人春

その二

ばらばらの学生三人波の花

清流の春水汲めば青葉城

身震いす洗濯初めの洗濯機

あけすけに性など話し柳の芽

ふるさとはいまもそのいろ草に霜

その三

水音を最初にたてり春の鯉

大寒の真中に満開梅の花

稿了る血圧上がる春立ちぬ

傘寿春万象万事一期かも

春夕焼け逆上がりできるまで三年生

成長とつまれた牙と終業式

その四

よく見れば音がなくなる春の雨

蓮ほりて水のけだるく映す空

ボストンの居酒屋深更牡蠣三十

啼く鴉巨大なる影春の道

この星をそっとぬけだしねこやなぎ

「年寄りはみたくねえ」同級会不参春

我が本をパンに変え来る宿の友

その五

降る雪や四方八方十六方

帰る跡なき住宅ばかり春の雪

人すれ違うどさっと傘に森の雪

立春の翌日の大牡丹雪

黄水仙さそわれていく名画座

黄水仙ほつほつほつとエデンの東

灰まぶし下を向かせて植える種芋

ひきこもる小年元気枇杷の花

富士の山一山隠す梅一輪

鞦韆を微かにゆらす春の雪

裕次郎の肩ぞろぞろと映画館春

泉湧く南面の丘縄文の春

はじめてのあさはじめてのきさらぎはちじゅっさい

春鴉二秒みつめてよこっとび