一つだけ吹きあがる雪春の雪
雪時雨一途に横切る椋鳥一羽
空碧き数多の枝に梅一輪
ある寺の朱門の上の大曇天
スマホする眉をきりりと寒椿
義理などと断じていはず子のゴディバ
秋水が武蔵野の音奏で
末子入学空いっぱいのしろもくれん
コロナ禍の春風はさんでハグをする
寒鴉つまずきてみるみぎひだり
通路の真ん中にいる雪女たち
猫可愛がり冬猫残してバスの発つ
反論を一緒に浴びたスーツ脱ぐ
春の川水のかたちに風の音
猫柳答えはきっとここにない
若きより大方のことゴミ初御空
街騒を時にはもとめ日脚伸ぶ
万年の陽あたたかき縄文の丘
ひからびるこの星堕ちて行く陶酔
日脚伸ぶ手を汚さずに生きるとは
木枯らしの葉毎にひかる八つ手の葉
闇を吸いひかる緑や八つ手の葉
雪時雨弾いて八つ手緑増す
こもりいる小心者に雪の声
冬すみれの声行く道を失わせ
機嫌よく咲いているのはポインセチア
小さき黙あつめ透明中央線
犬の春走り来れる街通り
西行忌ランニング一枚干される社員寮
三メートルの壁の厚さや変電所
比良八荒抗がん剤休薬中
なめくじを尾から飲み込む蟇蛙
2022年3月17日に以下追加
子供一人殺したら三回死ねプーチン
冷徹な狂気に刃物プーチンに軍
国民族で生きていないのに戦火難民春冷えて
狂気には外すにしくなしキエフ春冷
雪の上に雪降る音や雪の音
春暑し河津桜も散り初む
春暑し椿の花のつやつやと
行き止まりに梅の大木花盛り
さんしゅゆの蕾黄に立つ春の立つ
以上。