雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

その地域に住む人々の生命と生活を最上位において停戦を

 ロシアウクライナ戦争は、両方に死傷者が10万人以上の被害を生じ、一層し烈になっている。しかも両者ともに領土のどちらかへの帰属確定ということを主張し、ゼロサムゲームとなり、停戦,講和の見通しは全くついてはいない。

 この戦争は戦後国際体制の核心である戦勝国体制の崩れ、それと核兵器によって、従来の無条件降伏モデルが使えないものであること。それゆえ、国家や国家主権、国家の領土、「民族」などを最上位に置く、独立変数とする認識を、変えないと問題が解決できないこと。それゆえにその地域に住む人々の生命と生活を最上位に置くこと、それを独立変数にし、国家、国家主権などを従属変数にすることを述べてきた(「新たな戦争状態に対応する新たな知、新たな運動」『獨協大学地域総合研究所紀要』2023年3月、ブログ2022年12月2日。「ポスト戦後システムと再コモン化・コモン化」同前、ブログ2023年1月24日)。

   今度の戦争に即していえば、ウクライナ,ロシアへの領土帰属が争点になっている地域の未来とその形態をきめるのは、ロシア政府でもウクライナ政府でも、ナトーでもないこと、反ナトー勢力でもないということである。その形態には自治区自治共和国特別区、など多様に存在し、上記の原則に従い知恵を集めればたくさん考えられるだろう。そして、国際社会は、その自主的決定過程も含む自治を保障することである。

 以上によって領土帰属に帰着し、事実上どちらかが、決定的に壊滅されて戦勝国が、敗者を文化的にも改造するという無条件降伏モデルに無自覚に、あるいは事実上進んでいる非常に危険なを状態を変えることが可能になると考える。