雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

2023年5月の俳句

その一

虎杖の伸び立つ赤芽太平洋

春月かうかう忽ち異界ベッドタウン

沈丁花デモの帰りの一葉坂

気管支がおもいだしてる五月晴れ

夏来たる虻と蜂とを取りに行く

街賑やか血圧計と五月晴れ

その二

うぐいすのさえずり稚さな舟とめる

         いす

重患が押す軽患の車椅子緑立つ

夏の波光を分けて来たりけり

ぬいぐるみ同じ瞳をして買われゆく

天網の漏らす小物や吾亦紅

春憂をあつめて堕つる椿かな

その三

さえずりの去りて残りし葉の揺らぎ

エンバーミング足らざる面や走り梅雨

釣り上げしかさごの含羞リリースす

白単衣青橙一筆しゃがの花

花ごとの小さき欠伸花曇り

白光に溢れる花の影を漕ぐ

断崖に溢れる花と舟一つ

カヤックの桜ツアーに花花花

その四

サボテンの不当な太さ植物園

けばけばしい赤こそよけれアブソーブ

正義といふ名前の椿赤と白

風光る表皮やはらかメタセコイア

SLの湯気を貫く日の光

無人駅あわあわと咲くあけびかな

ベランダに富士撮るをとこ雪月花

その五

桜東風バギーの幼なの吹かれ顔

中国の人と隣に釣るうぐい

どすのきくラップ多摩川夏まつり

川急にうぐいすの声成熟す

くるぶしが話をしているいぬふぐり

新樹光あとは野となれ山となれ

オフライン銀杏新樹の並木道

最初のごみごみ袋の包み紙四月馬鹿

夕牡丹研究人に余生なし

馬車の馬瞳の中の夏の空

シーソーに座っている五月来る

豊満な肢体の忘我八重桜

以上