雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

2024年4月の俳句

その一 春一番吹き寄せられる園児たち 啓蟄や怒った猫のやうなひと 給水車からほとばしる春の水 しじみことことことことと囁けり、 春分の列車のさきの山の雪 春鴉五秒みつめて横によけ 不満媚愛の交じれる犬の目三月 顕学に呼び捨てにされる春の会 白髪の隙…

2024年3月の俳句

この二月は多忙であった。かねてから究明しようとしている自由主義と協同主義の関係をその経済と憲法に関連させた研究ノートをなんとか書き終えた。近いうちにある大学の研究所の紀要に掲載されるが、ここでも紹介するつもりである。 そのほかに、一つはウク…

2024年2月の俳句

その一 冬日満つ一ヘクタールの駐輪車 色褪せて冬菊咲くや底光り 赤ん坊の寝息聞える春障子 前の世の話声する白障子 日払いの仕事帰りのおでんなり 歯が痛いてふ初夢覚めても痛い 20を19と書く前世紀の遺物年賀状 暮れの日の光の強さにたじたじと 声届き声…

2024年1月の俳句

その一 書初めやひきこもりの叔父手本書く 殺人は許さない読み初めは露伴 塩鮭の塩にまみれる無表情 水落ちて昇る水あり大氷柱 つくらずならず窮鼠開戦日 三十五人殺して妻救う美談ハリウッド冬 キラキラと新樹の古墳バギャナなり 多詠少捨少詠多捨冬ざるる …

2024年の年賀状

明けましておめでとうございます。昨年中は大変お世話になりました。本年もよろしくお願い申し上げます。 昨年はウクライナ戦争に続きガザでも戦争がおきました。一昨年の研究ノートで述べた、その地域に住んでいる人の生活と生命を最上位におき、かんがえる…

2023年12月の俳句

その一 満天星「どうだん」の朱色透き切る十二月 冬の川孤独と異なる鷺一羽 三人の黙の真中の雪蛍 冬期講習同一の闇もちかえり それぞれのひかりのなかの七五三 七五三とにかく育つてありがとう 七五三育ってくれてありがとう 兎追ひ熊の足跡逃げ帰る 故郷と…

2023年11月の俳句

その一 ガザキーフ冬ホモサピエンス裸虫 小春日や箱毎暮れゆく観覧車 片頬に大西日立たされし教室 ジンジャーの花戦場のやうな町 迷子になっちゃたといひて泣き出す子供かな 命ふたつ施設の柵のほうせんか 破れ蓮死にざま本来かくのごとし 塹壕の上に毎年の…

2023年10月の俳句

その一 父と子の短い会話稲の花 むらさきの露草一輪芝離宮 長月のリトルトーキョーを歩いてゐる 金木犀かの世の雨に濡れゐたり 汽水線越えて釣られる鱸かな 撮りためて重きスマホや秋の雲 高声のおさなの一塊秋高し その二 自分変えず地球を壊したホモサピエ…

2023年9月の俳句

その一 苦瓜の小さき花に小さき蝶 噴水や故国異なる人ばかり 良き人生とのこされし者等言ふ仏法僧 極暑という季節を変へぬ野分かな 除菌ロボットに追はれる夏の爺と婆 銀ヤンマ反射して夏の闇 その二 噴水や忙しい人暇な人 アメリカの鯖雲に入るホームラン …

「君たちはどう生きるか」宮崎駿、吉野源三郎の意味と位置

昨日、かねて子供たちといっても40歳代だが、子供たちにすすめられた、宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」を見た。ジブリのものも含めてアニメについては系統的に見ていないものであるが、感じたことを書き留めておきたいと思う。 長い間、ものやことを…

2023年8月の俳句

その一 澄みきれる影水にあり八月の渓 真を避け善美に至り戦争ぞ えごの花の上なる闇の明るさ お父さんと呼ばれる猫や夏の街 真剣ななりゆきおにやんまの交 児の髪を揺らして過るおにやんま その二 怒られるわけわからないジギタリス 夏の漣離婚する船長 別…

2023年7月の俳句

その一 春の駒まっすぐに四肢八方に なるようになるなんとかなる百日紅 洗濯物干す夏 空となる 豹柄の大木なりけり蒟蒻盛夏 城下町上市下市夏の堀 大墳墓地に環りたり蛙鳴く 正道の夏の真ん中に逸れること 緩い論えごい筍洋風居酒屋 その二 山葵小屋にカミュ…

マイナンバーカードを実現するためにはベイシックインカムに関わらせること。

マイナンバーカードの普及が細かいことがたくさん生じ、スムースに進行していない。これはポイントを少しつけるとか、各省庁の利便性を増すとかの小手先ですむ問題ではない。日本に住む人々にとって、普遍的で、全体的なインタレストがかかわらなければその…

2023年6月の俳句

その一 関東の空を背負える萱新樹 さえずりの仕切る緑の四角形 なんまんだの呼応鋭し夏の通夜 はるじおんの翳にも小さき慰霊の碑 水に映るピアノの音の深緑 味噌汁の豆腐を切る大五月晴れ その二 すみれをば道しるべとして行く異界 ヘンウエイ越えホームラン…

政治史と政治社会史、中央と地域、政局とシステム、

最近、といってもこの4,5年私の総力戦体制論、潮流論、地域政治、自己革新論など、論争的に90年代にとりあげられたのとは異なるが、それらを前提として、編成しなおしたり、新しい展開をしている本や論文が、中堅や若手の人から送られてくることが多くな…

その地域に住む人々の生命と生活を最上位において停戦を

ロシアウクライナ戦争は、両方に死傷者が10万人以上の被害を生じ、一層し烈になっている。しかも両者ともに領土のどちらかへの帰属確定ということを主張し、ゼロサムゲームとなり、停戦,講和の見通しは全くついてはいない。 この戦争は戦後国際体制の核心…

2023年5月の俳句

その一 虎杖の伸び立つ赤芽太平洋 春月かうかう忽ち異界ベッドタウン 沈丁花デモの帰りの一葉坂 気管支がおもいだしてる五月晴れ 夏来たる虻と蜂とを取りに行く 街賑やか血圧計と五月晴れ その二 うぐいすのさえずり稚さな舟とめる いす 重患が押す軽患の車…

2023年4月の俳句

その一 青い空白もくれんの白い花 葉桜と盛りのあはひ華やぎて 合格す百花繚乱白もくれん 花びらは人を選ぶと四月馬鹿 一木ごと異なる空持つ植木市 海臨む花万朶青春晩期 気立てよきIをんながゐたり桜雨 その二 時計止まる時間無き空間春 白の正気白の悦楽白…

占領史と戦後史、方法としての体制論=システムと言語

はじめに 3月18日に占領・戦後史研究会が法政大学で行われた。テーマは、小宮京さんの『語られざる占領下日本ー公職追放から「保守本流」』(NHKブックス、2022年)の書評で、内容に即した竹内桂さん、「占領史研究」から近・現代史、との視点からの出口…

2023年3月の俳句

その一 鮎並の獣めく引き穴釣り二月 北浦に釣りしたなごの銀貨ほど 鮃の縁側黒霧島の湯割り 行く春や烏の口の半開き グレン・グールドのバッハ春の潮 黙食の貼り紙椋鳥やかましい その二 旬の詐欺中銭持ちの高齢社会 売り切れてピーナツを撒く鬼やらい 春の…

新しい研究段階

研究には新しいパラダイムの提起、論争、定着、新しいパラダイム、という循環があるが、その定着と新しいパラダイムの間には、そのパラダイムに正確に内在しつつ、新しい提起を行う段階がある。最近いただいた及川英二郎さんの大著『現代日本の規律化と社会…

2023年2月の俳句

その一 大寒の大楠の幹あたたかく 金色に透くカーテンのごと蠟梅 落とし湯のきゆふとないて寒に入り 加湿器の忘れたころに泡を出し いきなりのかの日の懺悔梅香る 東京湾のセイウチのためいき その二 初釣りや太平洋に浮き一つ 武蔵野を縦に分け行く夕時雨 …

ポスト戦後システムと再コモン化・コモン化

1、はじめに 僕も分からないことがいっぱいあるので、皆さんがいろいろなこと教えてください。大きなテーマとしては、「ポスト戦後システムと再コモン化・コモン化」です。これは本来人々や、自然の共有財産である、時間空間が、資本や多国籍企業の私有原理…

2023年1月の俳句

その一 全身に日のしみわたり大旦 春の野に重箱持たせ子を放つ 朱の闇をぬけ初参り鳥居路 石蕗の花庭師の所作の美しく 鴨のあと水脈のVの字どこまでも 極月の残照赤いカヤック 人消えてひたすら深紅冬薔薇 冬夕焼メタセコイアの丈高し 天国は一瞬一瞬ベリー…

2023年の年賀状

あけましたおめでとうございます。昨年中は大変お世話になりました。本年もよろしくお願いいたします。昨年は病を持ちながらも大過なく過ごすことができました。 研究については、コロナ禍の中対面および各種オンライン研究会に参加できました。3月27日の協…

2022年12月の俳句

その一 ドアの前主待つ猫冬夕焼 関東の隅までありあり冬の月 雨漏りにあたふたする夢秋深し コンビニを出るや一輪冬椿 砂被り赤いマスクや土俵冷え スマホ小便のひと秋深し 鳩下より現る病棟六階冬 妻三子震災死夜間中学生秋灯 その二 冬立ちぬ凛と整ふ辛夷…

新たな戦争状態に対応する新たな知、新たな運動

新たな戦争状態に対応する新たな知、新たな運動 2022年10月16日 文明フォーラム@北多摩研究例会(オンライン) 雨宮昭一 はじめに テーマは、「新たな戦争状態に対応する新たな知、新たな運動」というふうにいたしました。それはなぜかといいますと、多…

俳句の現在地

まだ知人になって短い田子慕古さんから、彼の第一句集である『霧襖』(東京四季出版、2022年)をいただいた。田子さんは、50歳の時、職場の俳句部にかかわって俳句を始められ20年たち古希となった本年に出版された。序を寄せられた「秋麗」主宰藤田直子…

11月の俳句

その一 敵味方戦死盛りの春の若者 街騒は無言の四叉路渋谷秋 街騒をバラードときく秋の暮 一つの買い物で帰る天高し 天高しコップ一杯富士湧水 よくみれば吾亦紅は赤酸っぱい 紅深し自足している吾亦紅 何もかも墨色にする街の霧 それぞれに霧を背負いて交叉…

2022年10月の俳句

その一 東北路稔り田なべて方形に 海の香の肉汁弾けカキフライ 帰り来て街に名月灯の一つ 桐一葉結構器用に生きている 歩く影皆透き通る盆の月 演奏やみ音のみ残る星月夜 その二 落葉踏みきのこの見える目となりぬ 街中の闇の中なる虫時雨 鹿の目にやはらか…