雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

2023年11月の俳句

その一

ガザキーフ冬ホモサピエンス裸虫

小春日や箱毎暮れゆく観覧車

片頬に大西日立たされし教室

ジンジャーの花戦場のやうな町

迷子になっちゃたといひて泣き出す子供かな

命ふたつ施設の柵のほうせんか

破れ蓮死にざま本来かくのごとし

塹壕の上に毎年の赤トンボ

エレベーター二十六階月に着く

その二

柱から人品みている蠅虎{はえとりぐも}

十月や曲がりくねって秋が来た

秋来り秋惜しむ秋二日

黒葡萄はみ一日をととのへり

レモン水やはり自縛のをとこなり

秋夕焼を着込む街並み海岸通り

ギブアップしたわけではない秋夕焼

下半身暮れて行きけり秋夕焼

さざ波と秋の夕焼け常陸の海

秋夕焼生徒の列の整然と

今生の命萌えたつ秋夕焼

通帳の記帳終われり金木犀

県境を越へるくちなわ六尺余

中世よりの卒塔婆輝くけふの月

その三

芋煮会つぎつぎ抜ける出兵す

父作る肉じゃがほっか広重忌

留置所の窓摺りガラス冬銀河

秋冬の時空交じわる神無月

秋の日や空っぽのままごきぶり家

かにの背に秋の日の濃し潮だまり

幕末の史料のほこり秋日ざし

船虫去り突堤全容秋日射し

がささささ船虫去りぬ秋残る

さざなみや秋の日三千の断片

補聴器のノイズのなかの秋の声

きりきりとおんな庭師や新松子

街灯の周りで虫はなきにけり

いにしえの波音聞こゆビル群秋

構造的犯罪構造的殺人ガザ秋

運のいい人になる本読む電車の人秋

白髪の混じる芸人良夜なり

七五三育ってくれてありがとう

抽象がわからぬ学者冬銀河

以上