雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

2022年10月の俳句

その一                                                               東北路稔り田なべて方形に

海の香の肉汁弾けカキフライ

帰り来て街に名月灯の一つ

桐一葉結構器用に生きている

歩く影皆透き通る盆の月

演奏やみ音のみ残る星月夜

その二

落葉踏みきのこの見える目となりぬ

街中の闇の中なる虫時雨

鹿の目にやはらかく会う路の角

雨戸より空を搔きつつ家守落つ

マスクして同じ頭形の父子かな

日曜日三鷹の駅の黒揚羽

ピーマンの種ごと炒め秋惜しむ

大欅何も持たずに鳥あつまる

その三

ボストンの楓紅葉透き通り切り

この戦後戦前とせず烏賊を干す

名前負けしているをとこ秋闌ける

蛇恐れ町場の少年ボス降りる

マンネリを真情込めて説く瑞穂秋

兵逃亡お天道様が許す天高し

鰯雲肉屋の屋号溶けていく

側に胡瓜垂直に飛ぶ猫の秋

その四

顔寄せて来る馬無言朝の秋

去る者は追わず来る者は拒み猫帰る

医療費の負担二倍蚯蚓鳴く

原稿に秋の風入れ完成す

利根川に近江からきたはすを釣る

思い込み微塵になりても思い込み秋

いい爺婆はみんなのもの秋高し

枯蔓の零余子の肉塊充実す

その五

犬去って海音残る晩夏光

街に咲く曼殊沙華の瘦せ加減

ただならぬ秋の風この地発祥の森

苦瓜の小さな花に小さな蝶

垂乳根の銀杏黄葉三千年

ヤンキースの帽子ばかりの中央線秋

兜太も好き龍太も大好き鰯雲

人消えてこの星残る核戦後

その六

ホテルはリバーサイド彼岸此岸

縄文人の家にもごきぶりそれ以来

太き鯔跳ねて水面に影残し

幼も老も刹那刹那の自然薯

子供三人腕太くなる母秋澄て

子等なべて親の圏外大銀河

花爛漫母喪ひし日の如く

バギーには老犬ばかり鰯雲

立ち枯れる曼殊沙華こそ曼殊沙華

ニッカポッカの人と鯵を釣る

秋浅し百CCの膀胱量

秋瓶の尿の重さを愛しけり

その七

甲州の葡萄酒醸す移住人

おびただしき光とともに鮎よせる

ガードマン濃きかたかげにガス工事

草いきれ蚯蚓脱走ひからびる

人の声海に映りて秋澄めり

以上