雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

2022年7月の俳句

その一

雲の峰背負いて都市の変電所

聡明を超える明るさあまりりす

朗らかな上臈蜘蛛の網に入り

素寒貧素寒貧と亀が鳴く

猫暑しいもむし暑し人暑し

炎暑なり歩道橋の理不尽さ

変電所の中の瀟洒な夏館

その二

小雀を飲み込む鴉雨しきり

小雀を飲み込む鴉にからすの子

プーチンと鴉は違う避けられる戦

避けられる戦避ける方法梅雨の明け

跳ねた鯔かもめとなりて大空へ

鯔飛んでカヌーに入りぬ汽水線

歯を削る土木工事や迎え梅雨

おおくしゃみ何も変わらずゼラニウム

風鈴に触ってみれば素寒貧

その三

素洗いの皿のひびきや夏の風

花きぶし出会いと噓の花言葉

薄味の色それでいいいろ花紫陽花

小潮満つる川岸六十年六月十五日も

上弦の月かうかうと敗戦の日

夏燕やわらかく裂く新宿の空

その四

卵生む烏賊の目険し春の海

孤児に親兵士に妻子ちゅうりっぷ

仙人掌(さぼてん)の花枝幹根と共に生き

自家の壊れっぷり鑑賞する人野分あと

おべっかでなしオマージュだとお世辞言ふ夏

叫喚は幼稚園よりキーフ夏

炎暑やりすごす夏眠中なりじじと猫

大花火開くや闇の改まる

以上。