その一
春の駒まっすぐに四肢八方に
なるようになるなんとかなる百日紅
洗濯物干す夏 空となる
豹柄の大木なりけり蒟蒻盛夏
城下町上市下市夏の堀
大墳墓地に環りたり蛙鳴く
正道の夏の真ん中に逸れること
緩い論えごい筍洋風居酒屋
その二
山葵小屋にカミュ全集第一巻
学生が卒業していなくなる
貝釦二つ外して夏句会
甲斐全山青葉若葉に溺れけり
一葉ごと光をたたえ金木犀
思慮深くやさしい少年夏来る
帰ってきたと笑み逝きし父庭若葉
木下闇そもそも初めは光なり
雉鳴くや空三角に変形す
その三
意図をせぬ夏断といふ自由
釣れぬ刻 ほどよく散らばる三尺寝
蝶として翻んいる我三尺寝
釣れぬなら無口不機嫌三尺寝
常磐の波の谷間の三尺寝
区切られしベンチに縮じみ三尺寝
日傘我まだ犯人の前防犯カメラ
今日のこと今日のことにてスクラベサクリ