雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

マイナンバーカードを実現するためにはベイシックインカムに関わらせること。

 マイナンバーカードの普及が細かいことがたくさん生じ、スムースに進行していない。これはポイントを少しつけるとか、各省庁の利便性を増すとかの小手先ですむ問題ではない。日本に住む人々にとって、普遍的で、全体的なインタレストがかかわらなければその普及は無理であろう。

 このことについては私の経験からお話ししよう。すでに30年も前に、留学したアメリカで私にも社会保障番号が与えられた。それはアメリカにおける総背番号制度である。あの統制嫌いと言われていたアメリカでなぜこんなに現実に普及したかをしらべると、1936年ごろ、大恐慌,ニューデイールのなかで、年金を受け取るためのカードとしてつくられたという。新たな年金制度に伴うカードは、まさに大衆的賛同と支持を受けて普及したのである。

 このことは多くのことを教えてくれる。つまり小手先でなく、時代の問題の解決にかかわることとかかわらせることである。このことについては私は、ベイシックインカムと関わらせることを提案したい。今全般化している正規と非正規の格差,分断、ジェンダー差別、若手研究者の生活困難、などなどの解決には、それらを超える制度として、ベイシックインカムに折に触れて言及してきた(雨宮『協同主義とポスト戦後システム』2018年,有志舎、228ページ。同「ポスト戦後システムと再コモン化、コモン化」『獨協大学地域総合研究所紀要』2023年、56ページなど)。

 このような社会の当面している歴史的課題の解決の実現の方法として提起されれば、アメリカの社会保障番号と同様に全般的に普及するものと思われる。