雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

2023年6月の俳句

その一

関東の空を背負える萱新樹

さえずりの仕切る緑の四角形

なんまんだの呼応鋭し夏の通夜

はるじおんの翳にも小さき慰霊の碑

水に映るピアノの音の深緑

味噌汁の豆腐を切る大五月晴れ

その二

すみれをば道しるべとして行く異界

ヘンウエイ越えホームラン彼岸の日

夏落葉他の若葉を若葉とし

なぜなのか一目おかれる蠅虎

はなあふち静かに揺れる三代の家

蠅の闇蠅虎の闇家守

その四

瞠目といふ一会あり縄文の夏

木下闇河馬のあくびの滑り台

海と船市場とろ箱夏鰹

マスクして己取り戻すをとこたち

つまりは生きているんだ更衣

更衣半世紀前の教え子と会ふ

柿若葉さらだ菜よりもさらだ色

その五

不要不急のことにあまねく春の月

今日のこと今日のことにて糞転がし

どくだみの花の煌めく午後七時

をとこ二人語り合ってゐる夏夕焼け

公園を斜めに過る夏の婆

縄文の土鈴さやさや夏木立

以上