雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

2023年9月の俳句

その一

苦瓜の小さき花に小さき蝶

噴水や故国異なる人ばかり

良き人生とのこされし者等言ふ仏法僧

極暑という季節を変へぬ野分かな

除菌ロボットに追はれる夏の爺と婆

銀ヤンマ反射して夏の闇

その二

噴水や忙しい人暇な人

アメリカの鯖雲に入るホームラン

星流るたまわりし本数多

胃袋にかすかな胃酸稲光

雲の峰皆世に出でて家滅ぶ

道のえの黒きかたまり大暑かな

空蝉の一片栞に歎異抄

見るものの奥を見てゐる青葉梟

鳩三羽結界を越へ雲の峰

その三

とがったものほど長いつきあい夏

ひたすらに妻と歩きし異国の夏

つゆ草の咲くやこの時この所

竜淵に潜む飛び出すもの飛び出さぬもの

目耳不如意日々鮮たなり雲の峰

秋風の声やや遠く日々鮮らた

暇な人忙しい人時計草

集中脱皮脱力碧あげは

その四

かなかなで明けていく高原

特急にどっと乗り込む大暑かな

ごきぶりも縞蚊も休む大西日

散らばっているおもちゃ大暑かな

午後一時新宿を行く大暑かな

六尺のくちなは過る処暑始まる

肺がんがカメラを貌く大暑かな

その五

かはかはと烏嘴空け大暑来る

かはかはと烏並走雲の峰

行き場所がなくなるをとこ大暑かな

夕焼けの丘を見ている縄文人

近世なき甲府の館大夕焼け

六日の九日の黙祷大豆干す

こぼれ種淡く小さく靭き朝顔

気がつけば虫の音のなか朝の秋