雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

2021年12月の俳句

怪漢のくしゃみ研究会始まる

ロッコリ友らみな大言放語す

いろいろな雲がある大根干す

着ぶくれて人知の及ばぬことのあり

冬隣風に遅れて揺れる苦瓜

鯔跳ねて向こふの世をみてゐる

いくものをいかせてコロナ再三

薔薇カサブランカに蝟集するしじみちょう

シャルルドゴールが好きと踏み込むマダム薔薇の園

大寒の土器の火焔の薄明り

漂猫で家猫冬は家猫

いくたびも灯す夜長や尿頻り

目柔らかなゴリラの貴方と凩と

元気な男は捨てるに限る寒昴

淡白な恋薔薇の迷路の快く

それじゃあな山の向こふも暖かひ

れんこ鯛環太平洋を生きてゐる

あっさりとおでんの別れ吉祥寺

人影も魚影もきりり冬堤防

校了す少長い弛緩喜寿紅葉

以上。

2021年11月の俳句

一瞬毎華やぐ翳や暮れる富士

上弦の月パンデミック五波六波

北多摩にこんなおほきな赤い月

靴下を脱ぐ茄子の花咲く

赤きまま富士の容に富士I暮れる

こほろぎのつづく主張に反論せず

夕闇の光に乗れる放屁虫

こほろぎの音止まぬからビール飲む

小鯛の目澄み切って太平洋

つんのめる直前の蝶の声

実銀杏の樹々猛々し遊歩道

特別快速人事のはなしえんえんと

芋虫語萩語蚯蚓語秋の風

リンゴスターもタックスヘイブン秋澄みて

冬隣り足の先のみ目覚めいて

火の前に飛び降りたのは夏の虫

農小屋で心中ありたり狐啼く

烏賊を干す戦後を戦後で終はらせる

ひひらぎの見てゐるコロナの行方かな

泣きに泣く異議申し立ての幼かな

アパートに若きが早く帰らぬをことほぐ秋

病棟に区切られ流る秋の雲

初冠雪富士にくっきり登山道

ホモサピエンスネアンデルタール人スーパー銭湯

明らかに故友の体型スーパー銭湯

野分晴木の葉もろとも鳥うらがへる

加え文完璧に入れくれし再校秋

以上。

 

 

2021年10月の俳句

封鎖飢餓ショスタコーヴィチ第七番

自転車屋が自転車を売る赤蜻蛉

清潔な持続の快感合歓の花

こまつたなあ茄子のうらなり

野葡萄を食むや紫紺の酸弾け

ベランダ菜園無常とはかく豊か

秋深し地球の海で鯵を釣る

秋の風ちがふ東京になっている

柿実るなど普通のはなしベルリンと

研究棟闇のやさしき帰り道

観念を着こなす講師鰯雲

ホームラン空の深さをつかみつつ

別個に校歌を聞き泣き卒業す

鬱屈に赤き透明ゆすらうめ

生き残り恥ず句見て好戦主義者恥をしれと兜太

ベランダ農東京で歳をとる

曼殊沙華翳なき人とすれちがふ

曼殊沙華I糸くず残して茎三本

秋蝶のあちらとこちらあはひ舞ふ

年ごとに来ては帰る帰り花

鬱といふ文字の輝く曼殊沙華

皮バンドの音微かに混じりホームラン

梨狩りの一個の巨大祖父に来る

なぜだろう妖気の抜けた曼殊沙華

初校終へひたすらに天高し

以上。

象徴君主制への作法

 真子さんの結婚をめぐっていろいろな意見、というより、結婚相手の人や、家族がいかに不適合かを、メディアも「皇室」や「天皇制」の専門家や研究者までがのべ、この結婚はするべきでない、に近い言行をしている。私は皇室にも天皇制にも、興味がなくあえて言えば、こんなに人権を無視されるファミリーを必要とする制度はあってはいけないと思っている人間である。

 象徴君主制は、好きな言葉ではないが「コストパフォーマンス」がじつによい制度である。一つの国や連邦のまとまり、アイデンティティ、バランスなどを君主ファミリーが象徴として体現してくれる。4,5年ごとに大統領選挙などで象徴をつくる非君主制はたいへんなのである。だから民主主義が成熟した国々でも象徴君主制が行われている。つまり人類の重要な知恵の一つといってよい。

 象徴君主制がなければまとまり、アイデンティティ、バランスなどを国民自らが不断に日常的につくっていかなければならないのである。今の日本は、日本国民は象徴君主制を廃止しようとしていない。つまり国民は民主主義的にその存在を支持し依拠していることになる。そのために人権が保証されない皇室、君主ファミリーが存在させられている。そうだとすればそのファミリーメンバーにはできるだけ自由に生きてもらうことをみんながあたたかくみまもり、保証することが、作法と思う。

 

 

2021年9月の俳句

不特定多数の無言蝉時雨

踏切を越へて秋の人になる

凶暴にすずむしすだく変電所

秋の闇のみ運ぶ新幹線

パラ初回戦傷者多今皆無日本夏

龍田姫灯のみ運べる是政線

女王としもべカフェの夏

群れ魚に子等も加はる夏の海

漂猫に慕ひ慕はれ夏続く

デモ指揮で検挙の若き日あたたかき母の黙

父逝くや旗幟を鮮明にせよと母のたまふ夏

食事が家族のもとなのにうるむ目夏

良典優斗真里奈泌尿器科医師の名前涼

pkを志願で決める監督涼新た

先発もおさえも広島五輪夏

技試しメダル失いしを世界の選手抱き担げり

すべりこみアウト風爽やか

つくつくにあとずさりする富士の山

大鯉に決壊したる大井川

天の川のぼりて出羽の立石寺

銀漢を降りるや西の本願寺

野分晴咆えるがごとき木々の揺れ

野分晴木々咆えるなり揺るなり

野分晴の風に見入るる幼かな

野分晴雲三層に流れあひ

百日草の朱に止められる媼一人

摺り足のスマホ歩きやハイヒール夏

やはらかく灯る全窓工房ジブリ

特養よりもれる合唱長崎の鐘

暖簾の片起こしバンデミック夏

台風が時間もろとも持って行く

打つ水が光を集めいしだたみ

以上。

 

 

 

俳句誌『澤』への応募の結果

 本日、私も参加している澤俳句会誌『澤』257号、2021年8月が届いた。そこには通常の記事のほかに、2021年1月15日に私も応募した新人賞など諸賞の審査結果が載せられている。74人が応募している。結果は賞はとれなかったが、私に関連することを記録しておきたい。未発表15句ということで、「秋の蝶兵士の列の乱されず」「前の世に見しごとき街春の雪」など『澤』で特撰に選ばれたり、「落花落花こと終はることの明るさ」などとりあげれた句も入ってはいない。応募句の表題と句は以下のとうり。

  生

来し方をうすべにいろに山躑躅

万緑をまといてしずか鯉の影

一瞬の闇のあはいや椿落つ

全ての道は老婆に通ず曼殊沙華

オノマトペはフランス語なりこをろこをろ

土塊の面魂や春一番

波荒く若布刈棹富士を断つ

いさかいのはざまゆらゆら雪蛍                                                         

かなぶんを闇にもどして終へる稿

雪解水紙漉く村を両断す

藤棚を抜けて異界の蝶となり

生きているだけでいいじゃんレモン水

冬麗ら老人赤信号を疾走す

新緑の遅速緩やか街の風

テキーラサンセットきりきり冷えて寒明くる

の15句である。新人賞の方でもいずれも数年以上会に参加し同人になっている方ばかりで、私のように2020年5月号から参加して8っか月足らずのものには重すぎたと思われる。ただ二人の選考委員による「第8回特別作品賞」で私の「生」を、選考委員の高橋睦郎さんに候補11人にとりあげていただいたこと、諸受賞、選外に「関わりなく、心に残った句」のなかに、私の「波荒く若布刈棹富士を断つ」をあげていただいたことは印象的であった。

 

 

2021年8月の俳句

五輪に反対だが、柔道とサッカーを楽しんでしまっている。昨日の柔道団体戦で、フランスが金、日本が銀、の結果は、色々な意味で柔道全体にとってベストだと思う。フランスが柔道人口世界一ということもふくめて。さて8月の俳句。

ひたすらに常盤木落葉恋始まる

野分運ぶ踏切の音乳母車

深海の太鼓回され極暑来る

横十列縦十列の赤蜻蛉

十薬に占領されて健やかに

アーテイストは非正規二人の父となる秋

逝く尾崎すべてただ泣く新入ゼミ生

ラベンダー満開微熱の地球

万緑にくるまれていく車椅子

穂含月男の替えはいくらでも

ご近所と日傘かけ分け長話

遠くには別の雲ありゼラニューム

ときわつゆくさ白のみの闇恋順調

背に腹に手に肩に荷の一年生七月

時計草四時間遅れの時刻み

夏空にゆっくり倒れる自転車の人

小蠅にも大小のあり研究棟

届けられし桃主食昆虫となり

双子パンダ交互に母にの姑息を愛す

以上