一瞬毎華やぐ翳や暮れる富士
北多摩にこんなおほきな赤い月
靴下を脱ぐ茄子の花咲く
赤きまま富士の容に富士I暮れる
こほろぎのつづく主張に反論せず
夕闇の光に乗れる放屁虫
こほろぎの音止まぬからビール飲む
小鯛の目澄み切って太平洋
つんのめる直前の蝶の声
実銀杏の樹々猛々し遊歩道
特別快速人事のはなしえんえんと
芋虫語萩語蚯蚓語秋の風
リンゴスターもタックスヘイブン秋澄みて
冬隣り足の先のみ目覚めいて
火の前に飛び降りたのは夏の虫
農小屋で心中ありたり狐啼く
烏賊を干す戦後を戦後で終はらせる
ひひらぎの見てゐるコロナの行方かな
泣きに泣く異議申し立ての幼かな
アパートに若きが早く帰らぬをことほぐ秋
病棟に区切られ流る秋の雲
初冠雪富士にくっきり登山道
明らかに故友の体型スーパー銭湯秋
野分晴木の葉もろとも鳥うらがへる
加え文完璧に入れくれし再校秋
以上。