雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

2021年10月の俳句

封鎖飢餓ショスタコーヴィチ第七番

自転車屋が自転車を売る赤蜻蛉

清潔な持続の快感合歓の花

こまつたなあ茄子のうらなり

野葡萄を食むや紫紺の酸弾け

ベランダ菜園無常とはかく豊か

秋深し地球の海で鯵を釣る

秋の風ちがふ東京になっている

柿実るなど普通のはなしベルリンと

研究棟闇のやさしき帰り道

観念を着こなす講師鰯雲

ホームラン空の深さをつかみつつ

別個に校歌を聞き泣き卒業す

鬱屈に赤き透明ゆすらうめ

生き残り恥ず句見て好戦主義者恥をしれと兜太

ベランダ農東京で歳をとる

曼殊沙華翳なき人とすれちがふ

曼殊沙華I糸くず残して茎三本

秋蝶のあちらとこちらあはひ舞ふ

年ごとに来ては帰る帰り花

鬱といふ文字の輝く曼殊沙華

皮バンドの音微かに混じりホームラン

梨狩りの一個の巨大祖父に来る

なぜだろう妖気の抜けた曼殊沙華

初校終へひたすらに天高し

以上。