雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

「幽霊の原稿」

 昨日、西麻布にある画廊スノーコンテンポラリーで、ベルリン在住で私の長男の雨宮庸介の「幽霊の原稿」と題する個展を見た。                  今度の作品は、直接のきっかけのひとつには今は落ち着いているが、ここ一、二年の父親である私と母親である私の妻がかなり重い病にかかってある意味で死と再生に関わりそれへの対応の過程、彼のパフォーマンスの絵コンテ、ト書き、論文に向けての学者の原稿など、それらの時間、空間、行為、関係による過程の局面局面とその連続を、一枚の二次元の絵にするという、新しい試み、と思われる。

 そのような試みは多くの場合わかりにくい表現になりやすいが、今回の黒地に白の螺旋は大変にくっきりと上記のの内容をある意味でシンプルに直感的に感じさせてくれている。それは上記の内容、および局面局面の総和以上の何かをも新しく表現している気持ちのよい絵画だと素人の私には感じられた。。

 

 

2019年9月の俳句

豊かゆえの行列の中秋の風

友次々と癌で壮健百日紅                            「しずかだね」幼なが母に涼新た

朝顔のさらに群青野分跡

とんぼ追ふ蝙蝠の群野分前

行く秋の波が波追ふ鹿島灘

新涼や海を見ている少女と老犬

かさご釣るかさごのごとき顔をして

反日と反北の向こうの風鈴草

反基地と親基地の向こうの秋桜

原発と反原発の向こうの風鈴草

空よりも川の明るく今朝の秋

ランドセル買ふ利己的遺伝子ひらひらと

店頭のトマトの赤み野分前

自己顕示よりひたむきな法師蝉

          以上

多様性豊かな小金井市には熟議の政治を

 本年7月21日に行われた参院選の結果は、全国的にも東京都でも小金井市でも共通性がある。議席上では自民党が多いが、自民も含め議席数、得票率ともに過半数を越える政党は存在しない。政党は多数で多様であり一党では政権は取れない、つまり争点が単純な一党優位制でも二大政党制でもない状態である。

 この傾向は小金井市では一層著しい。様々なストックを持ちつつ、グローバル化、低成長、高齢化、少子化、財政難、格差などの事態は、既成の政治の機能不全、安全保障や基地問題の手詰まり、社会の多様な要素の表出の不全をもたらしている。

 それゆえに新たなる政治のあり方、手詰まりを打開する政策、多次元の多様性=ダイバーシティの表出、が課題となり小金井市はそれらへの対応においていづれも先端にいることは、本紙2018年12月25日号に書いたとうりである。

 そのような先端的で豊かで複雑な地域の首長―市長は、上記の課題の実現をさらにすすめるために、以前のような多数党の与党を背景に一元的に政策を決め実行する、というかたちよりも(というかそれは不可能で不自然になっている)、市民や与野党関係ではない議会、議員、会派の考えを聞きながら、決定的な案ではなくたたき台を出し、それを議員個々、多様な会派、市民、地域の多様な市民団体などとじっくりと共に熟議を行い、政策を決め、実行していくことがふさわしい、と思われる。そこでは原案を修正する場合に修正案を出した議員や会派は公的に説明責任を果たし、市民に判断材料を与えなければならないことは言うまでもない。

 (付記、上記は『市民運動新聞』2019年8月5日号の「どうなる小金井市長選ー参院選結果を読む」に依頼されて書いたものである。この内容と深く関連しているものとして、私のブログ2018年12月30日30日の「小金井市近現代史から市の現状と課題を考える」、あるいは同テーマの「研究ノート」『地域総合研究』2019年3月を見ていただくと幸いである)。

 

 

小金井市議会報告会2019

 昨晩、小金井市議会報告2019「市民と議員の交流会議」に初めて参加した。最初に各委員会報告があり、次になぜ市政、市議会に市民の関心が低いのか、どうしたらいいか、あなたはどうする、の3テーマをめぐる「世界カフェ」が行われた。数テーブル、数人、議員一人ファシリテーターである。議員,行政の怠慢、不十分、宣伝の下手さなどの意見が多かったが私は次のような話をした。

 不満がないから関心がないのではないか。議員も市長も行政もよくやっているのではないか。不満とは例えば人口急増で汲み取りも不十分な時のような諸々の「不満」はもう解決してしまっているからである。たぶん議員も市長もさらに市民もその「不満」の次元で市政や議会の内容を依然として考えている可能性がある。

 その不満の既にある次の段階の課題、不満を顕在化させると関心も顕在化すると思われる。それは次の段階へのバージョンアップであり、この市における生活の新たな質の展開である。たとえば文化や遊びにも楽しみや健康にもひいては医療や福祉にも関係するが、自転車道が普通に作られればずいぶん生活は豊かになるだろう。そうすれば前の「不満」の段階で計画された、大事な自然や将来の生活空間を壊す大きな道路などを許すはずはないだろう。少なくとも「関心」はもつだろう。

 さらに前の「不満」の解決のために汲み取りの「直営」などによる公務員の増加は当然のことであるが、それが下水整備などで解決されれば再編されるのは当然である。その意味での人件費削減も既に終わっているとおもわれる。だからその段階の「人件費削減競争」の次の段階に入っていると思われる。一つは次の段階の課題を遂行する公務員が必要であること。もう一つは公務員の非正規化、などによる極めて不安定なありかたの増大である。社会保障費か人件費かというあり方では済まなくなっているのである。

 社会保障も人件費も可能にする市のありかたを構想しなければならないことになる。私はこの地域に住宅だけではなく、新しい生活の質に関わる文化、遊び、情報などに関わる企業、起業、産業が必要と考え「ポストベッドタウン」を述べてきた。これもポスト「不満」段階のはなしだろう。

 今回初めてこの催しに参加して30代40代の若い人も参加され、「子供と選挙にいく」とか「このような試みを無作為抽出でやったらどうか」などの意見も出していてずいぶん意味があることを強く感じた。議員の方々の努力に感謝したい。

 

 

 

 

8月の俳句

「ぼくがなにをしたの」被曝の五歳言ひて逝きたりと

戦死知らず恋を記して逝きたりと被曝二十一歳

山女魚釣る山の向かうの祭笛

はいはいとききながしてるあまりりす

(心技体の「体」を題としてあたえられて)                   油照り一体全体いかんせん

八月六日カーブ逆転ホームラン

マイナス思考は時間の無駄と酔芙蓉

                  以上

 

非利潤と非政府と協同主義

 7月20日に戦時法研究会があり大中有信「20世紀の例外状態と総力戦体制における日独法学ー日本の民法学・財産法学のための覚書」、および岩井淳「京都学派と戦時体制」の充実した2報告があった。いずれも対象の時期のアクターについての詳しい説明がなされ多くのことをご教示いただいた。発言するつもりはなかったが討論の最後の方で促されて次のようなコメントをした。

 戦時の学者、研究者、テクノクラート、などを研究する意味は何か。過去のもので、結果も分かったものとして「再現」したり「評価」したり「評論」したりして済むのか、を考えたい。そうすると1920年代から40年代という時代は、1つの転換期であること。大きく言えば近代の転換期で普通の人々の生活の困難が資本も国家もそしてそれらの関係としての国際システムでは解決できない時期になったこと。

 その解決をめぐって当時の学者、研究者、テクノクラートたちが必死に考えたものが社会主義、ナチズム、ファシズムニューディールなどなどでありその中での政策、学説、制度論、組織論などなどである。これらはすでに結果がでて終わったものとして扱われることが多い。終わったものなのか。

 現在も普通の人々の生活の困難を資本も国家も国際システムも解決できない事態にある。戦前戦時の事態の螺旋的であるが再現出である。つまり課題は継続中である。そして人間の知はそれほど無限にあるものではない。それゆえぎりぎりまで考え抜いたそれぞれの内容をリスペクトをもって明らかにする必要がある。それは同時に同じ「失敗」を繰り返さないためでもある。ある國、地域では現在カールシュミットがフリーハンドでとりあげられていたりするからである。

 当時は既存の資本や国家が不能であったから、いずれの人々もその意味で非資本、非国家から始めたが結果は上記のように多様である。私はこれまでの私の本やブログでのように、非営利ーNP,非政府ーNG、協同主義的国際システム、を内容とする協同主義を少なくとも近代全体、さらに戦前戦時の知的営為から考えてきている。それはレッセフェール自由主義でも共産主義ファシズム全体主義でもない問題の解決の仕方を提起しているからである。

 上記に関連して最近、ソウル市やスペインなどの社会的連帯経済の研究会や書籍で勉強をはじめたくさんのことを学んでいるが、NG、NPだけでなくGとPも同時にデザインする必要が近代であるゆえに必要であることを痛感している(なお協同主義については雨宮『協同主義とポスト戦後システム』2018年、有志舎、およびブログを参照していただくと幸いである)。いずれにしても戦前戦時、とくに戦時の研究ははじまったばかりである。

 

 

7月の俳句

いきているだけでいいじゃんれもんすい

鮒に戻る金魚まどろむ澱みかな

鉄線花いつから涙もろき父

梅雨晴れや光重たき街を行く

はいはいと聞き流してるあまりりす                  「ユーやっちゃいなよ」子ら育ちたり夏木立