雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

2023年4月の俳句

その一

青い空白もくれんの白い花

葉桜と盛りのあはひ華やぎて

合格す百花繚乱白もくれん

花びらは人を選ぶと四月馬鹿

一木ごと異なる空持つ植木市

海臨む花万朶青春晩期

気立てよきIをんながゐたり桜雨

その二

時計止まる時間無き空間春

白の正気白の悦楽白もくれん

白の狂気白の陶酔白辛夷

基礎疾患まみれは全疾患四月馬鹿

春灯す小庭の土のやはらかく

傘寿人踏み出すいなや花吹雪

裏返る鴉のだみ声四月馬鹿

その三

殻動き次に足出るがうなかな

殻回り肉のせりだす蝸牛

きらきらと蝌蚪食む青大将の真昼

海草(くさ)の香と光に噎せて磯遊び

それぞれのひとを見ている桜かな

花やはり生殖器なりさくらん

僻芽小花深紅野生のちゅうりっぷ

その四

傘寿人またも一会の桜かな

みほとりに母植えし百日草の花の列

シーレ見る人みなしなやかに春明かり

風もなく音もなく飛花深大寺

きむずかしいところへ行かぬ柳絮

真っ直ぐに降るをためらふ雪のあり

その五

春一番空には動く芯のあり

女子言葉なき談笑や風光る

春の子の泣き出す前の間のながし

よくいきている全「雑草」のとりがたし

菫の花にてらされ野道行く

花ごとの小さな欠伸花曇り

白光の溢れる花の影を漕ぐ

花びらの山と谷いくねずみの子

春光を啄む鶺鴒深大寺

断崖に溢れる桜花舟一艘

捕食者に毒蜜蜂に蜜ジギタリス