春満月を家の中まで連れ遊ぶ
春時雨蕗てふ花のあたたかさ
水平に氷河の擦痕岩山春
花に佇ち花の向こふを見てゐたり
初桜とらえし御器齧りのやはらかさ
大輪のらっぱ水仙息深し
花満つる桃の花満つ甲斐路かな
花満つる同姓の墓二十ほど
春燦燦万物を寛大にす
花絢爛花に負けても花と写す
中青年褒めていたわりノックする
打ち上げられし巨船四十五度春の月
チンピラを一人前にしてくれたと卒業子
菜の花を風がなでゆく廃線路
花に風昨日の憂さのおきどころ
悠揚と花と木もろとも夜に入る
江戸武蔵甲斐とわたりて花に飽き
以上