恐竜を祖にもつ白鳥のその声
雪しきりエンゲルス読む午後三時
一叢に一輪づつの寒椿
野良の径映画帰りの冬銀河
みどりなき土にやはらか春の雨
透明な城といふもの姫路秋
大寒や猫背を直せと猫にいふ
寒明くる親子にされたやまとやま
樺の木のてっぺんに寒鴉
おひつかれ鴉にのまれる雀の子
花もなき花壇ふうわり春の風
芒原月の温もりこぼさざる
ふかれ立ち色をひきずる落葉かな
介護する人のこころの冬景色
荒波にこころの澱散る冬の釣り
マスクした冬の漢の逸らした目
大寒や踏切の音街無言
蟻急ぐ碧い地球の間氷期
こっとんと月あらわれぬ鰯雲
一月の公園凧低きまま
少年のピアス光れる冬銀河
大寒やすっからかんと街に出る
以上