八月の雑踏八月の死者の列
咲き満ちてこそ散華蓮の花
月見草苦労と不幸は別のもの
啄木鳥の打つ音杜の深まりぬ
ベランダに茄子の花咲かせて喜寿
ベランダに茄子の花一人住む
長雨の自適の日々の茄子の花
最後には朴訥なのか茄子の花
妻に恋の人妻に逢ひの文喜寿初秋
苦瓜といふ明るい色のもの
ステイホーム結構無駄ある茄子の花
凡庸といふはあらざり茄子の花
ベランダで羽化した揚羽産卵に来
咲き溢る白百合カサブランカてふ然り
ベランダに蝉も立ち寄る長い梅雨
街の風新緑の遅速緩やかに
木瓜の花公園の緋の襖
こきこきと角磨いている天牛
天牛の白の斑点気難し
掃除して洗濯を了へ梅雨明ける
以上。