雪に春ごみのうえからあらせいとう
かみあわぬ犬と入れ歯と朧月
はずれにはかならず桜甲斐の村
疎らとはかくもはなやか藪こぶし
若柴の一葉一葉の陽のひかり
聞かなかったことにしてくれ亀が鳴く
何をしに来たか忘れて亀が鳴く
物理学ラボの机の亀が鳴く
エラーなしに進化はないと亀が鳴く
ヒヤシンスこの人なんとなくミドル
羽根布団干したら三倍サルバドール
ふわふわのおとこと青空柳の芽
沈丁花つかみどころのないおとこ
さんざしの花の向こうの牛乳瓶
公園のチュウリップはでかすぎる
落花落花こと終わることの明るさ
急ぐが要らないものばかり春深し
現代過去未来もろともに咲く桜
以上