雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

多様性豊かな小金井市には熟議の政治を

 本年7月21日に行われた参院選の結果は、全国的にも東京都でも小金井市でも共通性がある。議席上では自民党が多いが、自民も含め議席数、得票率ともに過半数を越える政党は存在しない。政党は多数で多様であり一党では政権は取れない、つまり争点が単純な一党優位制でも二大政党制でもない状態である。

 この傾向は小金井市では一層著しい。様々なストックを持ちつつ、グローバル化、低成長、高齢化、少子化、財政難、格差などの事態は、既成の政治の機能不全、安全保障や基地問題の手詰まり、社会の多様な要素の表出の不全をもたらしている。

 それゆえに新たなる政治のあり方、手詰まりを打開する政策、多次元の多様性=ダイバーシティの表出、が課題となり小金井市はそれらへの対応においていづれも先端にいることは、本紙2018年12月25日号に書いたとうりである。

 そのような先端的で豊かで複雑な地域の首長―市長は、上記の課題の実現をさらにすすめるために、以前のような多数党の与党を背景に一元的に政策を決め実行する、というかたちよりも(というかそれは不可能で不自然になっている)、市民や与野党関係ではない議会、議員、会派の考えを聞きながら、決定的な案ではなくたたき台を出し、それを議員個々、多様な会派、市民、地域の多様な市民団体などとじっくりと共に熟議を行い、政策を決め、実行していくことがふさわしい、と思われる。そこでは原案を修正する場合に修正案を出した議員や会派は公的に説明責任を果たし、市民に判断材料を与えなければならないことは言うまでもない。

 (付記、上記は『市民運動新聞』2019年8月5日号の「どうなる小金井市長選ー参院選結果を読む」に依頼されて書いたものである。この内容と深く関連しているものとして、私のブログ2018年12月30日30日の「小金井市近現代史から市の現状と課題を考える」、あるいは同テーマの「研究ノート」『地域総合研究』2019年3月を見ていただくと幸いである)。