雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

[一強」の今とこれから

 最近テレビで古賀誠氏が「安倍首相の後任は菅官房長官が適任である」と述べたのを聞いた(8日BS日本テレビ)。彼は岸田派宏池会の名誉会長であるが岸田氏が今首相になれば大変苦労する、とのべている。菅氏は土のにおいのする点で今の自民党に要請される資質を持っているとものべている。これらに関して感想を書いておく。          調べてみると菅氏は秋田県の精農で生産組合などを大事にする父親のもと、叔母、姉妹などが地域の教育者になっている家庭で育ち,,,自分の力で大学を卒業した。その後代議士の秘書、横浜市議などを経て衆議院議員となった。この過程で小渕派古賀派ー無派閥となり梶山静六氏を師とした。梶山氏については筆者が1970年代に辻清明先生たちと茨城県議会史執筆のためヒヤリングを行い、そのリアリティ、識見、決断力、戦争に対する批判、などに驚いたことがある。そして菅氏は田中派宏池会の流れにもかかわりがあることになる。さらに安倍4選,5選を公言し、菅氏を安倍後任に押す二階俊博自民党幹事長やその派閥も田中派の流れを継承しているように見え、対外関係、国内問題についても安倍首相たちとは対立するわけではないが必ずしも同一ではない。

 こうしてみると安倍首相や菅氏を支持する要人たちがその経歴からも同一でなく多様な考えを有していることがわかる。一強とよく言われるがそれは異なる考えを持った多様な人々とグループの多様な思惑の均衡の中のものであることがわかる。したがってまた菅氏が後任になったら田中派宏池会梶山静六安倍氏的なものなど様々な要素が顕在化するのは自明であろう。古賀氏や二階氏はかくして菅氏を自立化させる。   これら全体をみるとそこに戦後自民党の豊かな歴史的厚みを見ることができるだろう。なお古賀氏が岸田氏が後任になった場合に苦労するといったのは安倍的な勢力におされて岸田氏の考えていることがほとんどできない、と考えているように思える。菅氏の場合は安倍的なものをコントロールできる可能性を見ていると思われる。

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