雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

格差、コミュニティ、私的所有権

 この間いくつかの研究会に出席したが印象に残ったことに感想を書くことにする。少し前になるが5月28日に本当に久しぶりに歴史学研究会大会現代史部会に参加した。それぞれの報告、コメントにたくさんのことを教えていただいたが、1つは格差が偏差値的格差でとらえれていて例えば50年、25年前の格差の下での格差に苦しむ人の具体的な生活のありかたと比較して今の格差の意味をつめることが必要とおもった。2つ目は再開発などにより解体される様々なコミュニティの評価をより多面的に行う必要である。つまり一方的に被害者としてみるのではなく、次の新しいコミュニティへの条件としてみることでもある。これらの点については準備している本で詳しく触れる。

 7月17日にユーラシア研究会によるロシア革命100周年の研究会に参加した。やはりたくさんのことを教えていただいた。とくに池田嘉郎さんの報告は面白かったがそこで素人だから誤解しているかもしれないが、ロシア革命や現在まで続くロシアのあり方は西欧諸国のように私的所有権が根ずかず利害調整ができないことにある、とのおはなしであった。聞いているとなにか運命的にそうですべてをそれつまり社会に私的所有権がなくそれを基にする調整ができない、ことに還元するのか、あるいはすべての地域はその私的所有権と調整をモデルとしてがんばるべきだという前からパターンは違うがある話になるのかと思った。その二つ以外で何を語るかが課題であるように感じた。他の報告ではシベリア出兵については私も今からずいぶん前に『近代日本の戦争指導』(吉川弘文館、1997年)で当時の研究では解明されていなっかった撤兵過程もふれた。日本の出兵勢力の意図がロシア革命をつぶすことよりシベリアに「大緩衝国」を作るなど日本の利権拡大にあったこと、それが撤兵のありようを多様に規定したことなどはすでにそこで述べていたが報告ではそれ以上のことが聞けなかったと思ったのは当方の聞く能力の減退の可能性がある。