おほかたは水に流さず春ショール
打ち上げられし巨船の角度春の月
大地溝帯を走る人々大旦
校庭の空に溶け込む蛇口の氷柱かな
とも
一病が悪友への魔除け初桜
野馬はひらがなだろう かげろふ
藪椿一輪づつの墓参り
下萌えをボールのごとく犬走る
恋猫の闇の少なしベッドタウン
水仙をじつと見ている警備びと
ポットなる春の闇から湧く珈琲
春一番コロナの街をめくりあげ
春雨に突然さす日と鳴く鴉
春浅し少年ひたすら自捕自投
アスファルトに節分の豆一つ
ゆきのはて別れはつらし焼肉うまし
少年疾走春を追い越す
連翹を抜けて黒き猫となり
明=ミョウメイミン呉漢唐音ゆたかなり
蒲公英の黄のみ光れる急斜面
間氷期とある窓辺の紋黄蝶
下萌えや右往左往のビニール袋
呼びかけに弥勒の笑みを昏睡の母春
以上