雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

非既成勢力の自己革新と占領軍の物語

 中村元さん、笹川裕史さん、高岡裕之さんから笹川裕史編『現地資料が語る基層社会像』汲古書院をいただいた。全体に興味があるが、ここでは中村元さんの書かれた、「第5章 戦時戦後日本社会と露天商集団」にコメントをする。表題のテーマを実証的に論じた優れた作品である。その論点は一つは総力戦体制による強制的平準化の前にその集団の中に変化があったこと。二つ目に占領軍などはその集団を「封建的」として解体しようとしたこと、である。

 第一点については、「既成勢力の自己革新」が日本の「ファシズム体制」や総力戦体制を構成したが、“”非既成勢力の自己革新“”もあったことをこの論文はのべている。第2点については、まず占領軍のストーリーの相対化の必要という論点であり、つぎにその集団の“自己革新”の方向性と内容である。それは自由主義と異なる協同主義の契機である、と思われる。著者は続稿を準備しつつあるとのこと期待して待ちたい。