雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

歴史学研究会のズーム研究会に参加して

  この間歴史学研究会のいくつかのズーム研究会に参加したので全くの個人的感想をかいておきたい。

 歴史学研究会合同部会(11月29日)では、従来の中央集権的主権国家としての近世国家は実は水平的に多様な要素を含む国家であり、帝国であることを日本、東洋史西洋史から考えようとした。これまでの理念型の相対化であるが、同時にそれをふまえた新たな理念型形成過程でもなければならないと感じた。同全体会(12月5日)では「自己責任」という構造のなかで「剝き出しの個人」として現れる「生きずらさ」をめぐってであるが、それに対応するためには構造を可変性のもとに見て、市場でも国家でもない公共圏を考えるとき、協同主義が重要だとしきりに思っていた。

 同近代史部会ではたとえば障害を持った児童をどのようにサポートするかをめぐってドイツでは17,8世紀にプロテスタント系の教会を中心にその児童たちに人のために何かができる能力をつけることをおこなったが、しかしそれは客観的な経済性や「有用性」ではけっして判断せづ、本人が意義ある生活をできることを感ずればいい、としたという。19,20世紀になるとそれらは労働の能力を付与する基準となるという。手段としての障碍者の生き方の基準でない、本人の生き方を基準とするありかたは、宗教以外にもどのようにあるか、をしきりに考えた。これも協同主義との深い関連があるとおもっている。

 同現代史部会(12月6日午後)では冷戦期における中絶や避妊をめぐる議論であった。私は日本が「実験場」との議論に、一つは実験する主体と観察する主体を分離すること、また、両主体は多様であるはずだ。二つはそれとの関連で戦前戦時のとくに戦前のサンガー夫人と無産系や女性の運動はどうであったか、を質問した。

 今準備している研究ノートは「四潮流論から協同主義研究へ」というテーマであるが、それにも随分考える契機を与えてくれた研究会であった。設定された歴史学研究会の委員の方をはじめ、関係されたたくさんの方々に感謝申し上げたい。