雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

歴史的不見識ー最高裁の二つの「不正規労働」判決および学術会議候補排除

 本月13日に最高裁は正規労働者と契約社員等の不正規労働者は労働が違うので、待遇に格差があるのは当然との二つの判決を出した。この判断には驚いている。株主の利益のためには、労働者を安価に使うために分断しまくる新自由主義のほとんど直接的なお先棒担ぎをしているといってよい。しかしその新自由主義がいきずまりを見せ始め、最近では安倍内閣でさえ「同一賃金同一賃金」をいい始め、経済界も対応し始めている。様々な分野で分断と格差を少なくしなければ、今の段階の資本主義の現実的で豊かな発展はないことの表現である。すでに働く人の四割以上が「非正規」になって、やがて半数に至ろうとしている。戦前戦時のように国内では分断と格差政策で安価な労働と社会をつくり、当然起きる反対の事態を、国外に転化して「解決」することができなくなっているとすれば、国内で格差と分断を、あるいは相対的な再分配を強化する以外にないのである。

 働く側からも、これまでの「正規社員」にみんながなればいい、というわけではない。様々な働き方、多様な働き方が求められる段階にある。そこでは「正規」と「「不正規」の分断と格差の固定と拡大ではなく「正規」と「不正規」の区別を制度的になくすことである。

 このような全体として現実的に豊かな展開にある事態を見るとこの最高裁の二つの判決がいかに浅く、不見識きわまるかが理解されよう。

 不見識といえばこの間の学術会議推薦六名の排除の問題である。私は六名の方全員はご存知ないが、私の専門である政治学歴史学に関連する宇野重規さん、加藤陽子さんは学問内容も含めて直接的にも間接的にもよく知っている。宇野さんは国内外の知見を蓄え、日本の将来についても広く長い視野で提起できる力を持っている研究者である。加藤陽子さんは日本近代史の政治、軍事、政治家、軍部、国民の研究され、日本の「失敗」を鋭く、リアルに表現されている研究者である。ご両人とも建設的提起をなされ、時に政府の政策にも研究に基づいて意見を表明している。先に述べたように現在は新しいシステムへの移行期である。その時は多様な意見や動きに干渉せず、排除、抑圧せず、共に政策や制度をつくることが豊かな将来を迎えることになろう。たとえば下からの格差是正の動きや、学術会議の非軍事的的表明も明らかに日本の将来の国際的にもプラスのひとつの重要な契機であろう。そのてんで、当座のお先棒担ぎばかりしかいなくなるような事態を生じることを推進するような、この度の二つの「決定]は、歴史的不見識である。