雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

「非常事態体制」が促進することについて

 コロナウイルス対応は市場経済のみのその意味で“過剰な”グローバル化への市場経済以外の要素への“後戻り”の側面もあるが、歴史の中の、全面にわたる「非常事態体制」と共通するこれまでの課題の強制的、ある意味では暴力的促進を行う側面もあろう。

 送られてきた獨協大学地域総合研究所『地域総合研究』13号、2020年3月,で倉橋透所長は、「地域総合研究所と新機軸」と題する巻頭言で、2007年の創設された研究所でポストベッドタウン研究から倉橋所長時には「人口減少時代の大都市近郊地域における「地域モデル」の構築」に展開していること。それは人口減少、高齢化、インフラの再構成、、IOTの集約、保育、医療、介護の提供などの課題としてあらわれていることを指摘されている。さらに注目されるのは次の指摘である。

 新型コロナ感染症対策として、テレワークが推奨され、実際急速に進行している。この傾向が収束後も続けば都心への距離は意味を減じる。一方で、テレワークを支えるインフラ(つうしんいんふら、ワークスペースの確保、子供の保育のシステムなど)の整備が必要になる。このような今日的課題の発見、展望が重要との指摘である。

 2007年当時、職住の時間的空間的社会的な分離を特徴とするベッドタウンシステムが揺らいでいる。そこで次のシステムを、内外循環すなわちグローバル、ナショナル、ローカル循環と結びついた職住の再統合、再接合のシステムとしてとのポストベッドタウンシステムを考えた(雨宮『戦後の越え方』2013年,日本経済評論社、177‐183頁)。その時はソーホーなどにも触れているが抽象的であった。

 それが十三年後の今、倉橋所長が指摘するように新型コロナ感染症対策としてのテレワークの現実化、筆者の子どもや卒業生たちが知らせてくれる「在宅ワーク」の全面化として、情報化を自明に職住の再接合が行われていることにおどろく。、つまり「ポストベッドタウンシステム」の最も重要な契機の現実的進行である。このたびの「非常事態体制」がこのように一つの解を、すなわち課題の解決のリアルで具体的な形態の形成を促すのである。もちろんそれが自覚的に認識されていないとその中にある方向性は見えないだろう。