雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

対パンデミック、オーバーシュート「非常事態体制」を

 強風なのに桜の花がだんじて散らないのに驚いたりしているが、この数日の新型コロナウイルス感染者の急増にも驚いている。しかも検査が不十分なのでさらに感染者は多いはずである。 

 それゆえに日本全体としては感染爆発=オーバーシュートを遅らせるためにすぐに「非常事態体制」をつくるべきである。そのあと悪化しないならばレベルを下げていけばよい。すでに事態はは細菌学と経済学の段階から政治学、さらには行政学の段階に入っている。

 いうまでもなく現在起きていることは、グローバル化の不均等展開の結果である。つまり市場経済のみによるグローバル化が突出しており、それが生み出す人々の健康、福祉、医療、もふくむ非営利領域は追い付いていない。その追いつく課程をへてこの段階のグローバル化は仕上がる。その過程は排除あるいは軽視、無視されてきた国家や非営利領域の再登場とそれらによる「非常事態体制」という“後戻り”を通して前に進む。

 政治のありかたもカール・シュミットの「非常事態における決断」としては共通しつつも「やつは敵だ。敵を殺せ」の意味をもつ人間の友敵関係としての政治とは異なる「友」と「敵」の向こうの人間の共生と共存のための決断である。パンデミックやオーバーシュートを遅らせる密接と移動の禁止強制とそれを保障する諸領域のコーディネートをおこなう政治は人間の友敵関係ではなく共生の条件つくりである。

 そしてその方法も全体主義的でも自由主義的でもないものが要請されるし可能である。それは民主主義の主体、制度、手続きを十全に保持しての立憲的独裁である(内外の非営利領域に関わる協同主義や立憲的独裁に関しては『地域総合研究』13号、2020年3月に載せた「研究ノート」および最近のブログを参照)。