雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

「「株主主権」という旧い体制を越え」

 2年前の2018年3月に上梓した『協同主義とポスト戦後システム』(有志舎)の表紙の帯の裏と表の見事な文章を編集者であり社長である永滝稔さんが作成された。著者の私が付け加えたのは、唯一、「株主主権」のみであった。表の文章は

 

新自由主義の時代から新しい協同主義の時代へ

「自己責任」「市場中心」「株主主権」という旧い体制を越え、新たなオルタナティブを歴史の循環から理論化し、現実の地域で生起している動きと連動させつつ、新しい日本社会が進む方向を指し示す。

 

である。この「株主主権」を越えることについて、内外の経済界、財界から動きが始まり始めている。『朝日新聞』2020年3月12日朝刊では、関西経済連合会会長松本正義氏がそれを伝えている。

 1970年代に「会社は株主のもの」「企業は株主利益の最大化に専念することが社会のためになる」というミルトン・フリードマンの考えが支配的になったことから始まる。それが目先の利益の重視と社会の格差・富の偏在に帰結している。

 それに対して世界の政財界のリーダーの集まりである「世界経済フォーラム」(ダボス会議)は、本年2020年1月に「マルチ・ステークホルダーキャピタリズム」をテーマにした。つまり顧客、従業員、地域社会、取引先、株主などすべてに貢献するという内容である。その内容は日本でも既に追及されつつあるし追及しないと「周回遅れ」になることなどを松本氏は指摘している。

 2年前には「旧い」と言い切るのは大変だったが、株主主権システムを超える動きが地域や運動のほかに内外の経済界、政財界でもはじまっていることに注目したい。