雨宮昭一の個人研究室

政治学と歴史学と地域の研究をしている雨宮昭一の備忘録です

勉強しなおす楽しさ

 筆者は自分が住んでいるところ、働いているところから問題を考え、それを研究の課題にしてきた。住み始めて十二年になる小金井市も四年前に大学を退職して以来その課題を考えてきた。市の公民館の勉強会や講座の中から「雨宮ゼミ」がつくられ、市における福祉、財政、などを議論してきた。この一年程は市の近現代史を資料集やヒヤリング資料をつかって見てきた。その具体性、オリジナルな具体性はいつもの通りであるが既存の既得のモデルや理論では説明できない。

 1、近世からの歴史をふまえたこの地域の今後の展開、2、近世以来のこの地域の生活の困難の解決の仕方と今後、3、この地域の政治的社会的政策決定の困難さ。という課題を解明するためには歴史をふまえたオリジナルな蓄積を見てしまうと既存の既得の方法では困難であることが実感される。

 現在、市域を対象とする「市民運動新聞」」に連載の途中であるが上記課題の解明のために改めて筆者の既存、既得のモデルや理論を勉強しなおしている。1、についてはポストベッドタウン論のこの地域へのくぐらし方、『地域協働の科学』2005年、成文堂、『地域社会の構造と変容ー多摩地域の総合研究』中央大学出版部、1995年、戸所隆『地域政策入門』2000年、古今書房、柳瀬昇『熟議と討議の民主主義理論』2015年、ミネルヴァ書房等々たくさんの前に読んだり、買っておいた文献が筆者(雨宮)が現在考えている課題と方法(たとえば最初の本の佐藤滋論文の営利でも行政でもない社会力の議論、三番目の本の公私空間の止揚と共用空間創造などは、協同主義と深く響き合う)と新しい対話が出来て楽しい。2,について新旧住民の分断対立よりも農村の都市化、現在の都市の農村化という構造変化もいれて考えると、両者の連携、連帯こそが解明さるべき。3、については、熟議、政党論、ハーバマス、ルーマン論争まで改めて戻って勉強しなおしている。地域のオリジナルな事態はオリジナルな方法を要請する。その二つを出会わせるために勉強しなおすのはつまり研究者が自らの次元を変えるのは、これまでと同様大変楽しい。

 関連するが最近ミネルヴァから出版された上下七百頁におよぶ小室直樹さんの評伝を一気に読んだ。大学院と田無寮で同じ時期を過ごした人であった。もちろん小室さんを中心であるが当時の時代の知的状況も見事に再現されているすぐれた文献である。筆者はこの文献から当時同室だった医学部の学生だった人と五十年ぶりに会えることになった。